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だが、さう云つてすゝめる当の小谷には、その細面の小柄な様子には、何でも似合ふやうなところがあつたので、この紙衣裳さへ似合ふにちがひなかつた。小谷は何とかして、この場で房一に着させよう、その効果を楽しまうと考へているらしかつたが、房一が相手にならないので、話を他に持つてゆき、いきなりこんなことを云ひ出した。
思はず時間がたつてしまつた。房一は腰を上げた。前脚の上に顎をのせて長々と寝そべつていた犬は急に起き上つて身ぶるひした。徳次は、房一の往診の時間を大分遅らせたのにやつと気づいた。
「まあ、――上の町の大石さんとこ位は行つとくのもよからうが」
「――へえ、まだお帰りぢやないのかね」
房一は手答へのないのを感じた。
「君は昨日その九州から来た連中を赤山へ案内して行つたちふぢやないか」
練吉は盃を口にふくみながら答へた。
「杉倉まで――」
男は眼を閉ぢた。何も答へなかつた。
「どうでせう。いつそあの障子も脇戸もとり払つて、曇り硝子に高間医院といふ字を抜きましてね、厚い二枚戸でも入れたら――」
彼はもう少しで最も善い友人に向ふやうに考へごとを打ち明けるところだつた。
房一はきつぱり云つた。男は、これは話が判る、といふやうな顔をした。それに押つかぶせるやうに、